染付の器は日本のどこの家の食卓にも日々登場する定番のうつわと言える。描かれたモチーフにより、食材と共に食卓に季節感を演出する必需品であろう。 そんな出番の多い器には何より使い易さが求められる。この使い易さと季節感を大切に制作している小野田さんの器。その絵付けからは、作り手が絵を描くことを心から楽しんでいるということが伝わってくる。「時間をかけておこしたデザインに命をふきこんで、活き活きとさせていくのは喜びです。草花は風になびいているかのように、動物は性格があるように。」と言う。自然の中の草花、或いは生き物など、彼女が呉須で描くモチーフは時に愛らしく、時にユーモラスである。どんな料理をどの器に盛りつけるか、器選びの楽しさを倍加させてくれる優れものである。
普段の食卓で何気なく使える器を作っています、という川口さんは料理が映えるということを大切にしている。コンセプトはシンプルかつシックといえるかもしれない。基本の白いうつわ、貫入の入ったもの、金属を思わせる質感のもの、など確かにシンプルではあるがそれだけではない。料理を盛りつける前に、器そのものがもつ洗練されたニュアンスに気付かされる筈である。 稲葉さんの作る白い磁器の器は、お人柄を現しているのだろう。繊細で上品である。ふれなば折れん、という風情であるが、実は硬く丈夫なのだ。今回は食器に加えて、ライトなどインテリアとして暮らしを彩る作品も出品される予定である。
永田さんの絵から受ける第一印象は、色彩の豊かさであり、そのハーモニーの美しさである。色面構成は自然で無理がない。制作の原点になっているのは、主に日々の散歩の途中に見つける風景やもの達だという。視界に入ったそれらのモチーフは彼女の中で再構成され、相応しい色が与えられ、キャンバス上に再現される。美しい色面が、忙しい日々の暮らしの中で忘れかけている大切な何かを思い起こさせてくれる。
粉引も鎬も技法としては決して珍しいものではないにも拘わらず、加藤さんの作品には人を惹きつける何かがある。カップも鉢も皿も極くシンプルな形だ。それだけに、或いはそれ故に、作り手の人柄がストレートに表れているのかもしれない。何より手の仕事の魅力が伝わってくる器たちである。 彼は山で手掘りした土を使っている。掘った時の暖かく柔らかな感触や雰囲気を大切にしながら制作しているという。それが自然に器の使い手にも伝わってくるのだろう。不思議だ。
ACCa での二回目の個展となる今回は、稲垣さんの定番といえるグレートーンシリーズや土ものの器に加え、創作的な「小箱」や「花器」なども登場する。 滑らかな白い磁器肌にモダンなモチーフが線刻されたグレートーンシリーズは、洗練された美しい形もさることながら、その使いやすさに作家の細やかな心配りが感じられる。 一方、釉薬や焼きの変化による美しい景色が魅力となっている土もの・面取りの器は、その自然な色合いで優しく料理を引き立ててくれるに違いない。 今回初登場の「小箱」や「花器」は、器では見られない作家の別の一面と出会うことができるだろう。
松尾さんの小箱シリーズの作品からは普段見慣れているガラスなどとは違う美しさを感じる。しっとりとした質感や手触り、適度に重みのある厚いガラスの中に閉じ込められた色や光。ガラスという素材なのに、どことなく暖かみさえ感じさせてくれる。それらは、ガラスの持つ様々な魅力の内でも作家が最も伝えたいと思う美しさだという。 今回の個展では、小箱や花器、苔の植えてある苔棚など手のひらサイズの作品が、色彩も更に豊かになって、春の訪れを告げるように展示される予定である。
昨春拝見した内藤さんの作品は、その静謐な画面から静かな街の息遣いが聞こえてくるような存在感のある抽象画だった。果たして今回の個展ではどんな作品が発表されるのかと構想をきくのを心待ちにしているところへお便りが届いた。
岩絵の具を丹念に中指で溶いていく時間、その粒子が画面に重なりそしてそぎ落とされる中でうまれてくるモノ。 それはいつかどこかで見た風景であったり、見たいものであったりしますが、かつて描いた風景に、のちに出会う一瞬がある。 現実に見たのか夢に見たのか、さだかではない私の中にくりかえし立ち現れる初夏の海の風景の連作を発表したいと思います。
テキスタイルプリントのデザインを専門とする女性グループVIISIの初めての展覧会である。普段は原画を描くまでがVIISIの仕事だが、今回は染工場に出向き希望の色に仕上がるよう染めのプロセスにも立ちあっている。プリントのモチーフのテーマは「種」。ここから始まる!、というメンバーの意気込みが感じられる。「種」のモチーフが色、形とも様々に、異なる材質の布にプリントされバラエティに富んだ布が出来上がっている。この布を使って、日頃の生活に「あったらいいな」と思っているあんな、こんなをすきなかたちに仕上げ発表する。布地はもちろん、Tシャツ、バッグなど初夏の町にふさわしい作品が楽しく展示される予定である。
動と静。 化粧を掛けた生の土肌を、流れるように勢いのある線で掻き落とす技法は明快で、大原さんは筆で一気に書をものすように気持ち良いという。灰釉で焼かれた「掻落とし」の作品はいわば"動"。力強い線が魅力だ。 一方、布染は布に鉄を染み込ませ、素焼きの肌にモチーフを淡く染めていく技法である。しっとりと描かれた絵はいわば"静"。 更に最近、土肌に風紋を刻み、布染のモチーフを施した作品が加わった。動と静が出会う新しい造形の誕生である。今回の個展でどのような作品が発表されるか、期待がふくらんでくる。
個展の会期が6月と決まった時、尾形さんは「うーん、雨の時期。面白いかも...」と考え込み、そのまま独り物思いにふける詩人の顔になっていった。それから数ヶ月、彼女の中では徐々に個展で発表する作品のコンセプトができあがってきているようだ。 テーマは"雨と残像"。 「雨の日は包まれているイメージなのです。屋根やガラス戸や傘に、或いは雨の音に。それらに守られて、深い思考にひたることができます。脳裏には蒼くにじむ様々な残像が見え隠れする。そんなイメージを作品で伝えられればと思います。ガラスのカタマリの中や、瓶の中の部屋を覗いた時、見る人にそれぞれ思いを馳せていただけたらとても嬉しい。」
九谷焼の技術を学んだ香田さんの描く絵は色彩豊かで色味に濁りがない。鮮やかであり爽やかだ。オブジェの他に器類も作るが、モチーフは主に動植物。自然をオリジナリティーのあるデザインで表現し独特のエスプリを吹き込んでいる。 「私の作品を気に入って下さった人が、それを手元に置くことによって、なごんだり、優しい気持になれたり。そういう時間を持ってもらえると嬉しいですね。」と語る。 今回の個展は"動物"をテーマに、動物園にいるようなワクワクする展示にしたいと抱負を語っている。
半透明のガラスに伸びやかに引かれた線や自由に置かれたドットが井上さんの器を楽しくリズミカルなものにしている。四角だったり丸かったり、いろいろな形の皿たち。一様にみな優しい表情をしているのは光をそっと包み込んでいるからかもしれない。創作の源を語ってくれた。 「幼い頃、公園の砂場に行くと、黒い砂に混ざった半透明に光る砂を集めることが大好きだった。たくさん集められたそれらは、いつしか宝物となって空箱に収集された。 ガラスという素材を選び制作していく上で、最近の私は、ガラスの中に光を集める作業を楽しんでいる。それは幼い日の、私の宝物探しと同じ遊びなのかもしれない。」
今回の個展では、皿などの器に加えて多面体の大小の花器や壁面に不思議なニュアンスを与えるフレームなどを発表する。
メタルアーティストの服部さんの作品はいつも一杯の夢で膨らんでどこかへ飛んで行きそうだ。ある時は遠く空の奥へ、氷の海へ、またある時は灼熱の砂漠へ。見ていると次々にイメージが浮かんでくる。たった今宇宙から地球へたどり着いた船のようにみえることもある。 右の最新作には春が好きな作者の喜びが溢れている。素材は真鍮、銅、桂の木である。蛇口からプッと吹き出した雲に載っているのは赤い屋根の小さな家。これから、そう旅に出るところだ。春風を受けてプカプカと目的地のない旅かもしれない。 個展では工房から連なって飛んできた作品たちがお客様をお迎えする筈だ。
ガラス作家竹本亜紀さんの“ツヅレオリ”と題したシリーズを目にした時、パウル・クレーの絵を思い出した。多数の色面が組み合わされてできたモザイク模様が奏でる美しいハーモニー。ただしクレーの計算し尽くされた絵が緊張感を感じさせるのとは逆に、彼女の作り出す絵は優しく奥深い。幾重にも重なった色が濁ることなく響きあっているのはガラスという透明な素材の特性を素直に生かした結果と言えるだろう。 今回の個展ではモザイク模様の入ったオブジェと平皿に加え、アクセサリーや花器なども出品される予定である。
梨本さんの優しい表情の作品の前に立つと、自然に手が伸びその土肌に触れたくなる。 土ものらしい柔らかい雰囲気を醸し出しているのは、洗練されたデザインのベースとして施された二つの素材、白化粧と布目によるものだろう。 彼女は自分の作り出す器が 置いてあるだけでも、目に楽しい 盛り付けてみれば、より美味しい 手に触れれば、使い心地のいい ものであって欲しいと願う。 大丈夫。器たちは期待通り健やかに見目麗しく育っている。
まだ二十代ながら、その高い技術で日本のガラス界で注目されている佐々木さん。吹きガラスによるクリアな作品は端正で気品あふれるものである。決して声高に話しかける作品ではなく、静かに心に染み入るように語りかけてくる。真摯な作家自身の姿勢を表しているかのようだ。彼は常に、綺麗なものとは何か、良いものとは何か、問い続けながら制作をしているという。 今回は、クリアな作品に加えて銀彩を施したスモーキーなグラスなど、秋の夜長を楽しむのに相応しいシックな器約100点が展示される。
“ガレリア・アッカ”での2度目のフレスコ画展。 年を経て今にも朽ち果てそうな扉。つる草が明るい日陰を作り、別の世界の入口を暗示している。息を潜めひっそりと暮らす老いた住人を想像する。一方、最近塗り替えたであろう鮮やかなブルーの扉には黒のドット模様が飛び跳ねている。お入りくださーい、外は暑いでしょう、と。扉を押せば中からは朗らかな笑い声が溢れ出てくるに違いない。過去へも未来へも通じる扉。今回は初秋のチュニジアの古い町で出会った扉に心魅かれた作家がその印象を描いたフレスコ画小品とドローイングを発表する。
上絵磁器を専らとする渡邊さんは、様々な色を自在に使いこなし器に幾何学模様を施していく。朱や赤、緑やブルーが気品よく鮮やかに艶めく様はときとして漆器を思わせるものがある。かと言って決して重々しい雰囲気ではない。金銀彩も加え、一体何回窯入れしたかと思うほど手が込んでいるのだが、出来上がりはさりげなくフレンドリーである。使い手によって、和にも洋にも遊んでもらえる楽しい器たち。今回は写真の焼酎杯など小品を中心に発表する。
市岡さんは器もオブジェも手掛けるが、どの作品も確かな造形力を感じさせる。美しい形で定評のあるポットもまたしかり。器の場合、作家は使い易さとフォルムの両者をうまく融合させようとして悩むことが多いと聞くが、市岡さんもそんな一人かもしれない。オブジェでは美しいフォルムが見るものを惹きつける。 質感は自然でシンプルだ。素材の持ち味を引き出さんと丁寧に丁寧に手を加えていっていることなど少しも感じさせない。制作に熟達して初めて可能になる技であろう。 今回は約100点が発表される。
田代さんは益子に工房を構える若手作家である。焼締めをベースとした、土の表情が生きた作品作りを心掛けている。時として使われる灰釉などの自然釉も土の質感を更に高める役割を担っている。 土味を主張した彼の個性的な器は、それ自体の存在感に加え、どんな料理をも引き立てる包容力を備えている。使い手に楽しんでもらえる器作りという、作者の制作姿勢が伝わってくる。 オーソドックスなフォルムの器に加えて、少し緊張感を漂わせた作品にも挑戦している。そんな器を使う時は、使う側も自ずと緊張し作家との嬉しい連帯感を味わうことになる。
キルンワーク(電気炉による作業)の技術の可能性に挑戦しながら、積極的に作品作りに取組み、様々なイメージを形にしている塚村夫妻。 主にフュージングやスランピングの技法で皿やグラスを製作している剛さんの作品はカラフルで力強い。写真の作品は“白く積もる”というシリーズの長皿である。それぞれの季節に相応しい器やオブジェを提案してくれる頼もしい作家である。 一方、香織さんはパートドヴェールによるキュートなアクセサリーを得意とする。 今回は12月の雰囲気を一杯に表現した楽しい展示を繰り広げる予定である。